« 便利な耐熱湯呑み。ミルクのリゾット。 | トップページ | 評論『気まぐれに…』(Kindle版)をお買い上げいただき、ありがとうございます!  »

2019年1月30日 (水)

リチャード・ノル「ユング・カルト」にはトンデモ解説が(絶句)。スリランカ建国の父ダルマパーラに対するブラヴァツキーの言葉。(加筆あり、緑文字。30日の加筆は茶文字。)

2019年1月27日7時57分に初公開した記事。

過去記事に書いたが、ユングに関する辛口の本を探していたところ、本当に辛口なのかどうかは読まなければわからないながら、以下の本を見つけた。

ユングという名の「神」―秘められた生と教義
リチャード ノル (著), Richard Noll (原著), 老松 克博 (翻訳)
出版社: 新曜社 (1999/1/1)

ユング・カルト―カリスマ的運動の起源
リチャード ノル (著), Richard Noll (原著), 月森 左知 (翻訳), 高田 有現 (翻訳)
出版社: 創土社; 新装版 (2011/12/1)

これも過去記事で書いたことだが、読む必要があって図書館からアジア主義の本2冊、萬子媛の小説の資料にする本と一緒に、前掲書2冊も借りた。堀田善衛、辻邦生、シモーヌ・ヴェイユの本も再度。

で、老松先生の名訳に騙されてはいけない(?)と思い、同じ著者のもので、別の訳者によるものを先に繙いた。

目次を見ると、ブラヴァツキーの名があって、驚いた。ユングは神智学の影響を受けなかったのだろうかという疑問が湧いたことはあったが、ちゃんと調べたことはなかったので、疑問はそのままになっていた。

最初にブラヴァツキーとの関係を知りたいと思い、その章に目を通しかけたところで、……ブラヴァツキーや神智学協会に関してトンデモ解説が書かれていたために――ああまたか――、一気に読む気が失せてしまった。著者はおそらく、ブラヴァツキーの著作を読んでいない。どんな風にトンデモなのかは、いずれ別の記事で。

著者リチャード・ノルのプロフィールを訳者あとがきから拾うと、リチャード・ノルは臨床心理学者で、ハーバード大学で科学史を専攻し、博士号を取得後、現在同大学の特別研究員を務めているという。

ノルによると、ユングはブラヴァツキーよりもG・R・S・ミードの影響を強く受けたらしい。George Robert Stowe Mead(1863 - 1933) に関して、英語版ウィキペディアに書かれていることをざっと読み、ミードと神智学協会との関係がおおよそ掴めた。ミードはヘルメス主義、グノーシス主義の研究で著名らしい。

ブラヴァツキーや神智学協会に関する信用できない記述から考えると、ユングに関する記述もどの程度信用できるか疑問だが、2冊はざっとでも読む予定。

アジア独立運動に神智学協会の影響は大きかったといわれるが、このことは日本ではほとんど知られていないのではないだろうか。恥ずかしながら、会員のわたしでさえ、ろくに知らなかったのだから。

以下の本は前に一度借りてきてざっと読んだが、ちゃんと読むために再度借りた。スリランカ建国の父、アナーガリカ・ダルマパーラの章に次のような記述がある(下線引用者)。

アジア英雄伝―日本人なら知っておきたい25人の志士たち
坪内 隆彦 (著)
出版社: 展転社 (2008/11)

<ここから引用>
マハトマ・ガンジーはブラヴァツキー夫人の弟子から大きな思想的影響を受けていたが、ダルマパーラにとっても神智学との出会いは決定的だった。アジア各地の伝統思想、宗教の復興、それと結びついた反植民地主義に与えた神智学の影響の大きさは、もっと重視されても良いのではなかろうか。
 神智学協会会長を務めるオルコット大佐は、1880年にスリランカを訪れ、仏教に帰依した。その年6月、ダルマパーラは叔父に連れられてオルコット大佐の演説会に出かけている。そして、1884年1月、正式に神智学協会の会員になった。
 だが、ブラヴァツキー夫人は、ダルマパーラに「神秘主義を研究する必要はない。パーリ語を勉強すべきだ。そこに必要なものは皆見出されるだろう。そして、人類の福祉のために働くべきだ」と語った。

<ここまで引用>(坪内,2008,p.83)

下線部分に注目していただきたい。ここでのブラヴァツキーの言葉には、拙ブログ「マダムNの神秘主義的エッセー」の中の77「前世療法は、ブラヴァツキーが危険性を警告した降霊術にすぎない」で引用した中に見出される原則が息づいていることがわかる。引用したのは、質疑応答形式で著されたH・P・ブラヴァツキー(田中恵美子訳)『神智学の鍵』(神智学協会ニッポン・ロッジ、1995・改版)からである。

神智学協会の会員は一般に、もし、協会の三つの目的に共鳴し実行しようとするならば、どんな宗教や哲学を好もうと好むまいと自由です。この協会は理論的な面ではなく、実践的な面で同胞団という考えを宣布するための博愛的、学術的な団体です。会員達はキリスト教徒であっても、イスラム教徒であっても、ユダヤ教徒、パルシー教徒、仏教徒、バラモン、心霊主義者、唯物論者であっても、少しもかまいません。(ブラヴァツキー,田中訳,1995,p.29)

協会としては、政治に関係することを注意深く避けています。(略)神智学協会は最高の意味での国際的な組織です。協会の会員は人類の改善という唯一の目的で協力して働く、あらゆる人種、宗教、思想の男女から成っています。しかし、協会としては国民的、党派政治には絶対に参加しません。(略)国際的な組織ですから。その上、政治活動は必然的に、時や個人の特異性でいろいろと変わらなければなりません。神智学協会の会員は神智学徒として当然、神智学の原則を承認しています。でなければ、彼等は協会に入るはずはありません。しかし、会員達はすべての問題で意見が一致するということにはなりません。協会としては、会員全体に共通のこと、即ち神智学自体と関係するものだけを一緒に実行することができます。個人としては、神智学の原理に違反せず、協会を傷つけない限り、政治的思想や活動は完全に各自の自由に任せられています。(ブラヴァツキー,田中訳,1995,pp.227-228)

明治期、廃仏毀釈により沈滞ムードが漂っていた仏教界が神智学による刺激を受けたことは、何本かのオンライン論文(※)を閲覧したところでは間違いないようだし、神道も……


森孝一.シカゴ万国宗教会議:1893年.同志社アメリカ研究.1990-03-25,no.26, p.1-21.https://ci.nii.ac.jp/els/contents110000198859.pdf?id=ART0000567991 ,(参照 2019-01-28).

吉永進一, 野崎晃光. 平井金三と日本のユニテリアニズム. 舞鶴工業高等専門学校紀要. 2005-03-10,no.40, p.124-133. https://ci.nii.ac.jp/els/contents110004629004.pdf?id=ART0007341661, (参照 2019-01-28).

橋本満.近代日本における「宗教」の発見,あるいは宗教社会学の起点.甲南女子大学研究紀要.人間科学編.2013-03,no.49,p.133-144.https://konan-wu.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=1458&item_no=1&page_id=13&block_id=17,(参照 2019-01-28).

那須理香.1893年シカゴ万国宗教会議における日本仏教代表 釈宗演の演説: 「近代仏教」伝播の観点から.日本語・日本学研究,東京外国語大学国際日本研究センター[編] (Journal for Japanese studies). 2015-03, no.5, p.81-94.http://hdl.handle.net/10108/86184, (参照 2019-01-28).

「平井金三と日本のユニテリアニズム」の筆者のお一人である吉永進一氏は、平井のユニテリアニズムと同時に神智学との関わりを追っていながら、この論文でも、神智学協会の主要な著作物、すなわちブラヴァツキーの著作を読んでいないことがわかる。行動を追うには足跡さえ辿ればいいが、思想を追うには理解するしかないから、それができていないと支離滅裂な解説にならざるをえない。

もっとも、わたしも平井金三の作品は、青空文庫に収録されている「大きな怪物」(「新小説 明治四十四年十二月号」春陽堂、1911(明治44)年12月.https://www.aozora.gr.jp/cards/001360/card49256.html)を閲覧しただけなので、憶測にすぎないが、森孝一「シカゴ万国宗教会議:1893年」の中で、平井は万国宗教会議に日本仏教の代表としてではなく、神智学の代表として出席したとあり、森(1990)の論文で紹介された平井の演説の中に次のような言葉がある。

「西欧が不平等条約を必要だと考えるもう一つの理由は,日本人は偶像崇拝者で邪教信者であるからというものである。本当にそうなのか,あなたがたは日本語で書かれた権威ある宗教書を読んでから判断してほしい」

英語が堪能で、このようなことをいう平井が、神智学徒でありながらブラヴァツキーの著作を読まなかったとは思えない。

平井が、心霊現象の実在については肯定論に立ちながら、そこには個人の霊魂は存在しないとの否定的な態度を取ることについて、吉永は不思議でならないようだ。

ブラヴァツキーの著作で、カーマ・ローカについての論考を読めば、平井の言葉の謎は解けるだろうが、宇宙と人間の七本質、また神智学協会の三つの目的という、この基本さえ押えずに、吉永が神智学協会絡みの研究を続ける意味がわたしにはわからない。

万国宗教会議にはキリスト教の優位を誇示する雰囲気があったようだが、平井のキリスト教批判は反響を呼び、演説後、満場総立ちになったそうだ。平井は晩年ユニテリアン運動に参加したという。

森(1990)の前掲論文における演説からの紹介は、次の言葉で終わっている。

<ここから引用>
私が批判しているのは真実のキリスト教ではなく,誤ったキリスト教である。私は偏狭な仏教徒として,教派主義的な(sectarian)動機からキリスト教を批判しているのではない。私はキリスト教に対して最も辛辣な批判者である。しかし,同時に福音に対しては心から敬意を払う者である。万国宗教会議の目的は口先だけの宗教の統一ではなく,実践的な統一である。4 千万人の日本人は国際正義の上にしっかりと立って,キリスト教的道徳が完全に実現されることを待ち望んでいる。

<ここまで引用>

森(1990)のシカゴ万国宗教会議の「成果と評価」を読むと、複雑な気持ちにさせられたが、そうした部分も含めて、シカゴ万国宗教会議がどんなものであったかを別記事で論文から紹介しておきたい気がする。

山口靜一『三井寺に眠る フェノロサとビゲロウの物語』(宮帯出版社、 2012)の広告の目次、第一章の中に「神智学への関心」とあるので、読みたいと思ったが、生憎、行きつけの図書館にはない。

ネット検索したら、岡本佳子「明治日本の欧米人仏教徒と神智学—ウィリアム・S・ビゲロウの場合—」というのが出てきたが、これも残念なことに講演・口頭発表のようだ。

ウィリアム・スタージス・ビゲローはフェノロサと共に来日して、岡倉天心を援助した。三人共、日本の仏教美術の恩人として知られている。

先日読んだ岩間浩『三浦関造の生涯 続編』(竜王文庫、2018)の中に、感動したというべきか愕然としたというべきか、いずれにせよ、衝撃を受けた記述があった。

第二次大戦後のいわゆるGHQによる占領政策が開始されたとき、日本が国体――国柄、国風――を維持できるかどうかは、GHQの匙加減ひとつでどうにでもなったことに改めて気づかされ、背筋が寒くなったのだった。

前掲書には、竜王会の二代目会長(神智学協会ニッポン・ロッジ初代会長)であった田中恵美子は中西旭(1905 - 2005)から神智学を教わったとある。中西氏はちょうど100歳生きられたようだ。

中西旭は、GHQが神道を排斥しようとしたことに危惧を抱き、マッカーサー司令部に神道擁護の書『神道の理論』を提出した。それがどのようなものであったかを読むと、ああこれは神智学をやった人でないと書けないだろうな、という豪華絢爛な内容であるようだ。

中西の行動は、ウィキペディア「神社本庁」を参考にすると、神社界の生き残りをかけた打開策の一つであったのだろう。そして、神社は残った。『三浦関造の生涯 続編』には、中西は神社本庁の教学顧問となり、神道の哲学的理論の中心的な存在となったとある。

江戸時代に始まった檀家制度も、またGHQの息のかかった神社本庁も、仏教、神道にとっては不自然なものだという気がするが、檀家制度はキリスト教の脅威に抗して生まれたものであったし、神社本庁の誕生にも先人の生き残りをかけた苦闘があったことを思えば、違った感想が出てくる。

もし、神社仏閣が日本からなくなっていたとしたら、観光立国どころではなかった。日本文化自体、否、日本という国がそれでも続いているといえたかどうか。ぞっとする話ではないか。 

危機的状況にあった仏教、神道に神智学徒を通じて働きかけたブラヴァツキーの近代神智学がなければ、そうなっていたかもしれなかった。

国柄も国境も破壊して世界統一政府の樹立、ニュー・ワールド・オーダー(NWO)の実現を謀ろうとするグローバリズムの怖さ、愚かさに世界はようやく目覚めてきた。

グローバリズム、共産主義、シオニズム、ネオコンサバティズム(ネオコン、新自由主義)は同義語といってよい。これらはどれも、ロスチャイルド、ロックフェラーなどの国際金融資本家が育てたものだからだ。

大戦前の近代神智学運動の広がりとその後を見ていくと、ブラヴァツキーが育んだ「最高の国際的組織」は、第二次大戦期に、国際金融資本家に操られた国際的組織に敗北を喫したといえよう。

国際金融資本家に操られた国際的組織は、その目的も、アダム・ヴァイスハウプトが創立したイルミナティ教団の教説を取り入れた――目的のためなら手段を選ばない――やりかたも、ブラヴァツキーのいう「最高の国際的組織」とは、まことに対照的なダークさ加減である。

岩間浩『三浦関造の生涯 続編』を読んで割り切れない思いがした一節があり、そこには次のように記されている。

<ここから引用>
三浦関造は、その生涯において数々の霊的治療を行っていた。特に、昭和五(1930)年五月、アメリカに渡る時、船上で富豪ロックフェラー一家の、医師から見放され子供を癒したことが奇縁となり、ロックフェラー家による入国手続きでの証言でアメリカ入国がかなった事例が印象深い。

<ここまで引用>
(岩間,2018,p.8)

戦争すら操ってきたといわれる、国際金融資本家のダークな面を知らなければ、わたしも三浦先生のこのときの霊的治療を美談としか受止めなかっただろう。

三浦関造の癒した子供というのがロックフェラー家の誰だったかは記されていない。ちなみに、2年前に101歳で亡くなったデイヴィッド・ロックフェラー(David Rockefeller、1915年6月12日 - 2017年3月20日)は、1930年5月には翌月に誕生日を控えて、14歳だった。

親日家として知られたそうだ。

以下は、ウィキペディアの「デイヴィッド・ロックフェラー」より引用。

<ここから引用>
ニューヨークのマンハッタン西54丁目で五男一女の兄弟姉妹の末っ子として生まれる。
(略)1936年、ハーヴァード大学卒業。(略)
ニューヨーク市長フィオレロ・ラガーディアの秘書を務めた後、1946年に旧チェース・ナショナル銀行に入行。1961年にチェース・マンハッタン銀行会長に就任し、1969年から1981年にかけて最高経営責任者(CEO)となる。海外に銀行事業を拡大し、世界各国の政財界に幅広い人脈を築き、それを生かして民間外交を活発に行い、東西冷戦最中の1973年にソビエト連邦に赴いてソ連初の米銀行支店、中華人民共和国に旅して中国初の米コルレス銀行を設立し、三極委員会を創設した。外交問題評議会名誉会長。ビルダーバーグ会議には初会合から参加していた。
ロンドン・ロスチャイルド家当主ジェイコブ・ロスチャイルドとは過去50年にわたって交友関係を築いてきた。

<ここまで引用>
「デイヴィッド・ロックフェラー」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』。2018年12月30日 (日) 08:47 UTC、URL: https://ja.wikipedia.org

デイヴィッド・ロックフェラーは6回の心臓移植――7回との説もある――を受けたとされる。その心臓、わたしは江沢民派が行ってきた、まさに悪魔の所業である臓器ビジネスから調達したのかと思っていたが、クローンという噂もある。

無実の法輪功学習者、ウィグル人が臓器ビジネスの犠牲になってきたといわれるが、日本人はお得意様だそうだ。規制を求める声が日本国内からも上がるようにはなってきた。中国に渡って移植を受ける人々は、自分たちが人類史上最も忌まわしい殺人に加担しているかもしれないとは想像もしないのだろうか。

大紀元の以下のカテゴリーに詳しい。

中国の臓器狩り:大紀元
ttps://www.epochtimes.jp/special/34/index.html

当ブログにも、臓器狩りに関する過去記事がある。

2015年6月11日 (木)
失われたと思っていた中国五千年の芳香 ①弾圧される人々
http://elder.tea-nifty.com/blog/2015/06/post-c356.html

2015年6月13日 (土)
失われたと思っていた中国五千年の芳香 ②ジェノサイドを見て見ぬふりをするしかない日本
http://elder.tea-nifty.com/blog/2015/06/post-4872.html

ブラヴァツキーは大師に助けられたことはあったが、霊治療を行った形跡がない。彼女ほどの人にできなかったはずはないのだ。それには、彼女の深い考えがあったはずだとわたしは考えている。伝記の以下の言葉から推測しているにすぎないのだが。

(ここにあとで伝記から引用します。)

この記事は書き直して、神秘主義エッセーブログにアップの予定。

そういえば、一昨日だったか、BS世界のドキュメンタリー「シャネルVSスキャパレリ」を観ていたら、シャネルのライバルだったイタリア貴族出身のスキャパレリが一時期ブラヴァツキー夫人に心酔していたと出てきた。夫が神智学協会の会員だったようだ。離婚したようだけれど。

シャネルの黒に対して、スキャパレリはショッキングピンクに代表される大胆、前衛的なデザインで一世を風靡したらしい。面白い番組だった。

そもそもこの記事は簡単なメモで済ませて、あとはシャネルの番組とハリオの耐熱湯呑のことを書くつもりだったのに、何だかくたびれてしまって、どちらも書く気力がなくなってしまった。

|

« 便利な耐熱湯呑み。ミルクのリゾット。 | トップページ | 評論『気まぐれに…』(Kindle版)をお買い上げいただき、ありがとうございます!  »

歴史」カテゴリの記事

文学 №1(総合・研究) 」カテゴリの記事

Theosophy(神智学)」カテゴリの記事

思想」カテゴリの記事