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2018年4月19日 (木)

椿山滋「雨、嫌いやねん」(『日曜作家 第22号』)を読んで

休刊中の『日田文學』の同人仲間だった椿山滋(ペンネーム)さんがタウンマガジン『なかつ  VOL.209』(2018年3月1日発行)をお送りくださったことを以下の過去記事に書きました。

2018年2月27日 (火)
椿山さん、タウンマガジンありがとうございます
http://elder.tea-nifty.com/blog/2018/02/post-0fa5.html

今度は季刊文芸誌『日曜作家 第22号』をお送りくださいました。御礼を申し上げると共に、意欲的な創作活動に敬意を表します。

短編小説のタイトルは「雨、嫌いやねん」。

感想は、ネタバレになります。

これまでの椿山さんの作品の中でも、特に安定した筆力を感じさせられました。平易な言葉が使われていますが、それらが選び抜かれたものであることが、流れるような文章からわかります。

ストーリーを紹介しますと、主人公・逸郎の母親が倒れる場面から話が始まります。71歳の母親は五日後に亡くなります。

母親が倒れたとき、逸郎はその原因が自分の帰省にあったのではないかとの自責の念に駆られます。

私立大学卒業後も就職せずにバンド活動を続け、29歳のときにはメジャーデビューの話が聞こえ始めていたところ、新メンバーとして迎えた女性をめぐって内輪もめがあり、バンドは解散してしまいました。

その女性と同棲していた逸郎は彼女と共に新メンバーを募り、バンド活動を再開したものの、思うような結果は出せず、女性とも別れた逸郎は6年前の36歳のときに、音楽から完全に遠ざかりました。

逸郎は様々な職業を転々とするうち、抑うつ神経症になって、帰省したのでした。

5年前に、父親も亡くなっていました。狭量で神経質、短気で臆病な父親に逸郎は自分が似ていると感じています。四つ上で46歳になる兄はそこそこの会社に勤めていましたが、リストラに遭います。自分のために兄に大学進学を諦めさせたという自責の念も、逸郎にはありました。

兄は父親に反対されて結婚せず、逸郎と同じく独身でした。優しい、しっかり者の兄と、その兄に甘え依存する弟の逸郎。弟を心配する兄の焦慮、弟の情けない様子が丁寧に描かれていきます。

逸郎はやけを起こし、ちょっとした狂言自殺をはかります。夢の中で前を行く母親に追いつけなかった逸郎は、自分に呼びかける兄の声で意識を回復しました。「起きなくていい、そのまま寝てろ」と言う兄の声は慈悲に満ちていました。

その兄はしかし、その同じ時刻に交通事故を起こして病院にいたことが、看護師の緊急電話からわかります。

病院にいるという兄に死なんといてくれと訴えかけ、「おれは寄生虫やない。おれは寄生虫やない。なぁ、兄ちゃん、聞いてるか? おれは寄生虫やないで。ちゃんと働くで」と半泣きになった逸郎が転がるようにして部屋を出るところで、小説は終わります。

プロになれない物書きは、主人公・逸郎が目指していた音楽の世界での成功を文学の世界でのことに置き換えて読むでしょう。わたしには恐ろしい小説でした。

考えてみれば、音楽や文学の世界に限らず、どの世界においても、逸郎は星の数ほど存在します。

その逸郎の存在価値を認める家族は、友人は、知人は、いないのでしょうか。彼のベースギターの音は、一番身近な家族には聴こえなかったのでしょうか。

その点が充分には描かれていないために、聴こえなかったとしか思えず、逸郎の存在は救いようのないものになっています。

家族は逸郎が見た音楽の夢のために被害を被った人々であるといえますが、一方では逸郎もまた、音楽がわからない家族の無神経さの被害者であるともいえます。

芸術の世界であれ、どの世界であれ、スポットライトを浴びて活躍できるのは一握りの人々にしかすぎません。その一握りの人々だけでは当然ながらその世界は成り立たないわけですが、逸郎はその自覚に欠け、成功を目的としすぎていたのではないでしょうか。敗残者っぷりが半端ではありませんから。

バンド活動中のベースを弾く逸郎の様子が効果的に挿入されていたとしたら、小説はまた違った雰囲気になったでしょうね。

「最後のほうは意地だけでつづけていたようなもんやった」としても、逸郎が10年以上生きた音楽の世界について具体的に知りたいと読者であるわたしは思いましたが、あえてそれをせず、作者は世間の目となって無慈悲に(安易に)逸郎を断罪しているように思えました。

いやー、わたしにはホント、怖ろしい小説でした。ちゃんとした感想になっていず、すみません。

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