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2018年2月 5日 (月)

歴史短編1のために #34 鹿島鍋島家の御殿医

萬子媛をモデルとした小説のためのノートというよりは個人的な覚書なのだが、鹿島鍋島家に関する事柄が入っているので、ノートに加えることにした。

亡き母の友人で、現在は博多にお住いのキクヨさんから年に一、二度電話がある。

83歳の高齢で、ここ数年、腰痛やパーキンソン病による歩行の不自由などがあり、お体がつらそうだ。

キクヨさんは鹿島鍋島藩の御殿医の家系の人で、萬子媛をモデルとした小説の第一稿を「あなた、面白かったわよ! 三回読んじゃった」といってくださった貴重な読者だ。

2016年5月 9日 (月)
御殿医の子孫から聞いた萬子媛の歴史短編の感想
http://elder.tea-nifty.com/blog/2016/05/post-7a1a.html

小説をこのままでいいとは思っていないが、もしこれを大衆向きの歴史小説にしたら、キクヨさんも、キクヨさんと同じように作品を喜んでくれた人々も離れて行ってしまうに違いない。

「小説はどうなった?」と気がかりそうなお声。「第二稿に入るところです」といった。

自分の書いたこの小説を通し、わたしはキクヨさんと年齢を越えて――おこがましいかもしれないけれど――本当の友人になれた気がする。

まず、以前と比較して、ナイーヴそのもののお声が違う。それまではガードのようなもの、警戒心のようなものが感じられた。わたしという人間の正体がもう一つわからず、気が許せないという風に感じられていた。

ところが、下書きに近い代物であるにも拘わらず、第一稿の小説を内容的に受け容れ、共感を寄せてくださったことを感じ、神秘主義的な表現をも快く捉えてくださったことがわかった。その一点といっていいかもしれない。わたしが他人との絆を感じられるのは。

職業作家にはなれなくとも、創作を続けてきてよかった。本当に。

わたしはキクヨさんが我が家に手製のプリンや抜群に美味しい煮物を持って遊びに来られていたころから、キクヨさんと友人になりたいと思っていた。キクヨさんは勿論、母を訪ねて見えていたのだった。

キクヨさんは父親を亡くしたあと、母親に仕え、親戚のために心を砕き、長く独身だった。中年になってから、博多にお住いの大学教授のところへお嫁に行かれた。

数年後にご主人が亡くなり、しばらくはひとり暮らしを続けて血のつながらない孫の面倒を楽しそうに見たりなさっていたが、やがて身辺を整理してホームに入られた。

見かけは普通のおばさんだったが、わたしはキクヨさんの秘められた知性に、子供のころから敏感に気づいていた。人知れず冷たく光っている宝石のような孤独や、持って生まれた類まれな純粋さにも気づいていた。

でも、わたしはキクヨさんの堅いガードを解けず、友人にはしていただけなかった。ずっと、そうだった。馬鹿なことをしてはよく注意され、プライドに障ることをいってしまってはしっぺ返しを食らうことなどあって、わたしには手強い人だった。それでも、キクヨさんが大好きだった。だから、母が亡くなった後も連絡を取り続けた。

昨年、わたしは中学時代からの友人2人と別れた。友人として純粋に愛されているとは思えないところが決定的になったからだった。その代わりに、古くから知ってはいたが、友人とはいえなかった人と友人になれたのだった。

萬子媛は長生きされたが、お子さんがたを亡くしたあとで病気になられたようだ。上のお子さんを看取り(下のお子さんは鍋島光茂公に仕えて佐賀に住んでいた21歳のときに亡くなり、急死だった)、萬子媛を診察し治療したのはキクヨさんの御先祖様だったに違いない。

「トンさん(殿様)」と呼ばれた鍋島直紹公が健在だったころのお話だったと思うが、そのころまでは鹿島鍋島家の集まりが催されていて、御殿医の子孫のやはり医師だったキクヨさんの叔父様が紋付羽織袴で出席なさっていたという。

昨年、祐徳博物館に、佐賀錦のお守り袋を寄贈したとおっしゃった。「あまりに綺麗なので」とキクヨさん。直紹公の御祖母様のものだった、とおっしゃったかな。あまりに長電話で、鹿島鍋島家の話がいろいろと出てきたものだから、わからなくなってしまった。祐徳博物館に行ったときに拝見しよう。

鹿島鍋島家の菩提寺である普明寺を見学した話をキクヨさんにすると、わたしには荒れ果てているように見えたけれど、奉仕活動で定期的に清掃されているそうだ。キクヨさんの叔父様は年に二回は必ずお墓参りに普明寺に出かけられたという。普明寺にあるのは、キクヨさんの御先祖様が代々治療を施し、看取った方々のお墓だ。

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