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2018年2月27日 (火)

椿山さん、タウンマガジンありがとうございます

休刊中の『日田文學』の同人仲間だった椿山滋(ペンネーム)さんがタウンマガジン『なかつ  VOL.209』(2018年3月1日発行)をお送りくださいました。

同人仲間とはいっても、合評会・懇親会でお目にかかったことはなかったので、お顔もご経歴も存じ上げませんでした。

1ページ丸ごと使って、椿山さんの御自宅の書斎を背景にした白黒写真(書棚の本のタイトルがくっきり写っていればいいのにと思いました)、プロフィール、文学歴、奥様のこと、創作に関するエピソードなど紹介されており、椿山さんを知るにはお得な(?)1冊となっています。

記事のタイトルは、「夢は直木賞 16年間書き続ける」。

第46回九州芸術祭文学賞大分地区優秀作を受賞、「恋待ち商店街の素敵な面々」で第18回長塚節文学賞候補、2年ほど前から関西系の季刊文芸誌「日曜作家」の同人。

親しみの感じられる平易な文章で市井に生きる人々の生活ぶりが活写され、そこにある出来事が起って、そのことに心を揺さぶられる主人公の内面的変化が丁寧に描写される――といった作風が印象に残っています。日本文学の伝統を受け継ぐ作風といえるでしょう。

わが家にある『日田文學』のバックナンバーから椿山さんの作品を拾ってみました。

いんちき商法で物を売りつけるブラックな会社に入社してしまった主人公の感覚の変化と、その商売から足を洗うまでを描いた『リセット』(51号)。

痛ましい死に方をした愛犬が神様の温情により女性の体を5日間だけ借り、可愛がられて幸福だった思いを伝えにくる『神様の思惑』(52号)。

同性愛者である女性の内面の動きを追った『リワインド――このドアを開けて』(53号)。

43歳の若さで事故死した妻と毎夜、心の中で対話して忠告を受けとる男性の身辺雑記『おかえり』(55号)。

転職を繰り返す主人公に疲れて離婚した元妻が末期がんになり、再会を求めてくる『彼岸花』(56号)。

80歳になる父親が認知症になり、病気から来る行動に振り回される家族の悲痛な思いを繊細に捉えた『紫陽花日和』(57号)。

様々な趣向が凝らしてあっても、どの作品も例外なく読者が想定できる範囲内の結末に落ち着くように読めるのですが、それが作者の人生観であり、美意識であり、思想であるからだとわたしには思えます。

どの作品も良識を感じさせる品のよい仕上がりになっていることからも、そのようにいえるという気がします。

椿山さんのご文運と今後の一層のご活躍をお祈り致します。

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