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2016年6月 1日 (水)

神智学の影響を受けたボームのオズ・シリーズ、メーテルリンク『青い鳥』、タブッキ再び

過去記事で書いた「Theosophy Wiki 神智学ウィキ」に作家、詩人、劇作家といったカテゴリーがあり、神智学協会と関係があった作家、詩人、劇作家がリストアップされている。著名人というカテゴ リーもあり、そこからアインシュタインを閲覧すると、アインシュタインについて興味深いことが書かれていた。このことについては、別の機会に。鈴木大拙も 著名人のカテゴリーにある。

アインシュタインもそうだが、第二次大戦中ナチスの影響下にあった国々では神智学協会のメンバーは迫害を受けたようだから(共産圏でもそうだろう)、神智学の影響を受けた人々が出てきにくいという事情がありそうである。

迫害を恐れたために関係を否定せざるをえなかった人々もいたに違いない。過去記事で書いたカンディンスキーの奥さん(ニーナ夫人)の場合はどうだろう。

  • 2015年7月 5日 (日)
    電子書籍とパブリックドメインの絵 ②カンディンスキーと神智学、アントロポゾフィー(人智学) ※6日に追記あり
    http://elder.tea-nifty.com/blog/2015/07/i-f865.html

また日本語で調べている限り、神智学と作家との関係が出てきにくい。

ウィキペディアに書き込まない我々日本の神智学協会のメンバーに責任 があるのかもしれないが、ウィキペディアが研究者や翻訳家の出版物を元に書かれていることが多いことから考えると、戦後赤化してしまった日本の研究機関で、調査中の人物が神智学と関係があることがわかったとしても故意に無視されるといったこともありそうである。

そうした疑いをわたしは次の過去記事でぶちまけている。

  • 2014年2月27日 (木)
    神智学に満ちているアントニオ・タブッキの世界 ②「インド夜想曲」その1
    http://elder.tea-nifty.com/blog/2014/02/post-be66.html

イタリア神智学協会の公式ホームページで「有名な神知学者の名前の一部」という項目を閲覧すると、名が見当たらないから、タブッキは神智学協会に入ったことはなかったのかもしれない(鈴木大拙の名が挙げられている)。

  • Società Teosofica Italiana(イタリア神智学協会)
    www.teosofica.org

しかし、「インド夜想曲」では神智学協会インド国際本部が舞台の一つとなり、会長なる人物まで登場して意味深な会話を交わす場面があるのだ。

「インド夜想曲」はアラン・コルノー監督によって映画化されている。当時、急に知人が神智学協会のことを知りたがったので不思議に思ったら、この映画を観たばかりだったのだとわかった。このように、一般的感覚からいっても、神智学協会に関するちょっとした情報がほしくなるくらい印象的なモチーフの一つとなっていた。

また、タブッキにとっては研究対象という以上の大切な存在だったと思われるポルトガルを代表する詩人フェルナンド・ペソアはバラ十字会のメンバーだったそうだが、ペソアは神智学協会第二代会長アニー・ベザントの著作を訳しているという。

それだけタブッキのムーディーな作品は神智学の薫りでいっぱいであるのに、作品解説にも作家の特集号にも神智学や神智学協会に何の言及もないというのは不自然である。

ところで、前掲の神智学ウィキで「詩人」を閲覧したら、イェイツの名があった。ウィリアム・バトラー・イェイツは(William Butler Yeats, 1865 - 1939)は詩人で、アイルランド文学復興運動の指導者であり、わが国での知名度も高い。

作風から神智学の影響が感じられ、以前本や日本語版ウィキなどで調べてみたが、「黄金の夜明け団」のメンバーだったことしかわからなかった。

今改めて閲覧してみると、日本語のウィキペディアにはイェイツが英国バラ十字協会系「黄金の夜明け団」のメンバーで日本の能の影響を受けたことや1923年にノーベル文学賞を受賞したことなどは書かれているが、やはり神智学の記述は皆無である。

英語版ウィキには神智学協会との関係について書かれている。神智学ウィキでは、イェイツが神秘学、スピリチュアリズム、バラ十字運動に興味を持ち、神智学協会ダブリン・ロッジの重鎮だったと記述されている(→ここ)。

『オズの魔法使い』を書いたライマン・フランク・ボーム(Lyman Frank Baum、1856- 1919)の『オズの魔法使い』は日本語版ウィキペディア「オズの魔法使い」に「アメリカ初のおとぎ話」(→ここ)と書かれているように文学史、ファンタジー史、またアメリカの文化史においても極めて重要な作品だと思われるので、神智学ウィキの「作家」で逸早く目に留まった。

ライマン・フランク・ボームがメソジスト派の家庭に生まれたことは日本語版ウィキペディアの「ライマン・フランク・ボーム」に、ボームがルイス・キャロルの1865年の『不思議の国のアリス』から影響を受けていたらしいということは「オズの魔法使い」に出ているが、神智学との関わりについての記述は皆無である。

神智学ウィキによると、ボームは1892年9月4日に神智学協会に入会している(→ここ)。英語版ウィキペディアにも記述がある。ボームが神智学協会のメンバーとなったのは36歳のときであった。

それから8年後の1900年、46歳のときに『オズの魔法使い』がアメリカ合衆国イリノイ州シカゴのジョージ・M・ヒル・カンパニーから初版が出版され、以後20年に渡って14巻からなるオズ・シリーズが刊行された。

オズ・シリーズに神智学の影響がないとは考えられず、ボームが影響を受けたというルイス・キャロルだが、神智学ウィキによると、ルイス・キャロルは心霊現象研究協会(略称SPR)の会員で、神智学にいくらかの関心があった。彼はシネットの『エソテリックブディズム』のコピーを所有していたという。

過去記事でも引用したが、SPRが誕生した経緯について、ブラウァツキーの伝記ハワード・マーフェット(田中恵美子訳)『近代オカルティズムの母 H・P・ブラヴァツキー夫人』(竜王文庫内 神智学協会 ニッポンロッジ,1981,p.265)には次のように記されている。

マイヤーズは神智学協会に関係のある超常現象に特別な興味をもっていました。彼もその友人達も皆、博学な人達でしたが、最近、自分達の特殊な協会をつくり、このような現象の研究を始めました。

これがSPRと呼ばれるようになった組織なのである。

SPRの設立に関わったフレデリック・ウィリアム・ヘンリー・マイヤース(Frederick William Henry Myers, 1843年2月6日 - 1901年1月17日)は長い間神智学協会のメンバーだった。

ホジソン・リポートの存在もあって、SPRを神智学協会の上位に位置付けた対立構造を煽るような書かれかたをすることが多いが、実際にはSPRは神智学協会の知的で自由な、開かれた雰囲気のなかから生まれた組織であった。

ブラヴァツキーの相棒オルコット大佐はSPRを歓迎して一生懸命に協力したが、ブラヴァツキーにはSPRの研究全体に懸念があったようで、『近代オカルティズムの母 H・P・ブラヴァツキー夫人』(竜王文庫内 神智学協会 ニッポンロッジ,1981,p.266-267)には次のように記されている。

彼女はこの研究全体に懸念をいだいていました。S・P・Rの高慢な英国の知識人達は現象の背後にある人間についての深いヴェーダの考え方については何も知りませんでしたし、自分の徳性の全傾向を変える放棄のヨガや自己放棄については何も知りませんでした。彼等にとっては推理的な心が最高の神でした。彼等の心は非常に訓練されていたかもしれませんが、制限されており彼等がつかもうとしている超メンタル界にはとても及ばぬものでした。――間違った角度から本質的な謙虚さもなくとらえようとしていたのです。

神秘主義者であれば、目に見えない世界の研究には浄化された心の認識力が用いられることを知っているが、SPRのメンバーはそのような心得のないまま、世俗的な心と物質界の装置で無意味な研究を行おうとしてい.るという懸念がブラヴァツキーにはあったのだろう。

ルイス・キャロルは1832年に生まれて1898年に没しており、ブラヴァツキーは1831年に生まれて1891年に没しているから、2人は同時代を生きている。神智学協会とSPRの形成期に、ルイス・キャロルが双方に興味を持ったとしても不思議ではない。

ホジソン・リポートに言及したついでに書いて置くと、神智学ウィキに「Category:People who encountered Mahatmas」というのがあって、マハトマに遭遇した人々――38人――がリストアップされている。興味本位な記述ではない。

一方で38人全員が精神障害者かペテン師か、あるいは霊媒だったと想像するのであれば、他方でブラヴァツキーを代表者に選定して彼女を霊媒でペテン師だったと性急に結論づけたかった人々の利害と目的は何だったのかと想像するのでなければ、バランスがとれない話である。

いずれにせよ、ホジソン・リポートの虚偽性は1977年にSPRの別のメンバー、ヴァーノン・ハリソンによって暴かれた。

この調査結果はブラヴァツキーを誹謗中傷した人々にとって面白くないからか、ブラヴァツキーの世間的な名誉回復はなかなか進展しない。

『オズの魔法使い』に話を戻すと、再読の途中だが、中年になって読むと、ドロシーが子供らしく自然な感じに描かれていることに感心した。次の部分に、心臓病の発作に悩むわたしは慰められた。

少しずつでもオズ・シリーズを読んでいって、神智学の影響を探りたいと思っている。

『青い鳥』を著したモーリス・メーテルリンク(Maurice Maeterlinck, 1862 - 1949)についても、調べてみたい。

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