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2015年8月 8日 (土)

高校生の読書感想文におすすめの本 2015年夏

短編・中編小説

夜間飛行 (光文社古典新訳文庫)
アントワーヌ・ド サン=テグジュペリ (著), 二木 麻里 (翻訳)
出版社: 光文社 (2010/7/8)

『星の王子さま』を書いたことで知られるサン=テグジュペリはフランスの作家ですが、パイロットでもありました。実体験をもとにドキュメンタリータッチで書かれた、美しさとスリルに満ちた作品です。

田園交響楽 (新潮文庫)
ジッド (著), 神西 清 (翻訳)
出版社: 新潮社; 改版 (1952/7/17)

盲目の少女が牧師に引き取られます。粗野だった少女は牧師のもとで成長し、次第に洗練されていきます。やがて、手術の成功で目が見えるようになった彼女が見たものは……? 

複雑な内容の小説ですが、複雑であるからこそ小説を読む楽しさが増し、当然、解釈もいろいろと出てきますから、それだけ感想文も書きやすいというわけです。

肉体の悪魔 (新潮文庫)
ラディゲ (著),  新庄 嘉章 (翻訳)
出版社: 新潮社; 改版 (1954/12/14)

ラディゲの長編処女小説といわれていますから、長編のグループに入れるべきでしょうが、ストーリーがシンプルであるためか、あまり長いとは感じられないので、このグループに入れました。

15歳の少年と19歳の人妻が出会い、あまやかに始まった恋愛は……という、よくありがちなストーリーの小説です。

しかし、よくありがちでないことには、この小説をラディゲは16歳から18歳の間に書き、20歳で夭逝(ようせつ)しました。

恋する男女の未来に何の手心も加えない、クールな筋の運びです。箴言(しんげん)のように響く言葉を頻繁に自身につぶやく主人公は、そうすることで恋愛を成熟の糧(かて)としているかのようです。

精緻(せいち)な心理描写に驚かされますが、わたしの場合は年取ってから再読した今のほうが驚きが強いように思います。

感性のネットワークを張り巡らせ、人妻に関係のあることばかりか自分から出た考えや感情に至るまで、全てをキャッチし、客観的に解釈しようとする、凄まじいばかりのエネルギーに圧倒されます。全文、どこにも弛緩(しかん)した箇所が見当たらないのです。

ラディゲに対抗するつもりで、意欲的な感想文を書いていただきたいものです。

草の竪琴 (新潮文庫)
トルーマン カポーティ (著), 大沢 薫 (翻訳)
出版社: 新潮社 (1993/3/30)

カポーティは『ティファニーで朝食を』のような軽妙洒脱(けいみょうしゃだつ)な小説や、この『草の竪琴』のような哀しくなるほどに美しい少年時代の小説を書く一方では、『冷血』の如き重厚なノンフィクション小説も書いた作家です。

次に紹介するフィツジェラルドとどこか共通点のある、アメリカらしい作家といえるかもしれません。

グレート・ギャツビー (新潮文庫)
フィツジェラルド (著), 野崎 孝 (翻訳)
出版社: 新潮社; 改版 (1989/5/20)

アメリカの一時代を知るためにも、ぜひ読んでほしい小説です。きらびやかな華やかさとわびしさが交錯する、ため息の出るような世界が描かれます。読書感想文は書きやすいと思います。

ハツカネズミと人間 (新潮文庫)
ジョン スタインベック (著),  大浦 暁生 (翻訳)
出版社: 新潮社 (1994/8/10)

アメリカの良心を代表しているような作家スタインベック。スタインベックの小説は社会派小説に分類されると思いますが、叙情味ゆたかで、哀切なところがあり、アメリカの土地の香りがしてくるようです。

マンスフィールド短編集 (新潮文庫)
マンスフィールド (著),  安藤 一郎 (翻訳)
出版社: 新潮社; 改版 (1957/9/3)

人間の気分というものは、周囲のちょっとした気配に影響されて一変することがあります。そうした過程を、マンスフィールドほど巧みに描いた人は少ないでしょう。

喜怒哀楽がこんなに微妙なところから誕生するとは、自分ではなかなか気づくことができません。このような人間の秘密を明晰(めいせき)な形にして教えてくれる、希有(けう)な作家です。

とても短い作品が多い短篇集ですが、読書感想文が書きやすいかどうかは微妙でしょう。

ただ、一編の短い小説から何枚もの絵画が出てくるかのような美しい作品ばかりなので、こうした機会にマンスフィールドの世界を知っていただきたいと思います。

萩原朔太郎 (ちくま日本文学 36) 
萩原 朔太郎   (著)
出版社: 筑摩書房 (2009/6/10)

萩原朔太郎は詩人として有名ですが、小説にもいいものがあります。

『猫町』『ウォーソン夫人の黒猫』はどちらもとても短い幻想小説で、感想文におすすめです。『ウォーソン夫人の黒猫』は心理小説なのかオカルト小説なのかわかりませんが、怖いですよ。上品な作風であるだけに……。

散文詩

プラテーロとわたし (岩波文庫)
J.R.ヒメーネス (著), 長南 実 (翻訳)
出版社: 岩波書店 (2001/2/16)

プラテーロというロバに語りかけられた、138編の散文詩です。読み進むにつれ、アンダルシアの風景や町並み、人々の暮らしなどが見えてきます。

プラテーロがどんなロバかは、こんな風に書かれています(11ページ)。

プラテーロはまだ小さいが、毛並みが濃くて、なめらか。外がわはとてもふんわりしているので、体全体が綿でできていて、中に骨が入っていない、といわれそうなほど。ただ、鏡のような黒い瞳だけが、二匹の黒水晶のかぶと虫みたいに固く光る。

1956年、ヒメーネスはこの作品でノーベル文学賞を受賞しました。

印象深かった詩のどれかを採り上げて感想文にしてもいいでしょうし、全体の感想を書いてもいいでしょうね。

戯曲

ギリシア悲劇〈1〉アイスキュロス (ちくま文庫)
アイスキュロス (著),  高津 春繁 (翻訳)
出版社: 筑摩書房 (1985/12)

高校生の夏休みにギリシア悲劇にチャレンジしてみませんか? 一生の宝物になりますよ。

一番目に収録された作品『縛られたプロメテウス』は、読書感想文にオススメです。

夜叉ヶ池・天守物語 (岩波文庫)
泉 鏡花 (著)
出版社: 岩波書店 (1984/4/16)

美の極致といってよい、泉鏡花の幻想的な戯曲です。ストーリーは、『天守物語』のほうがわかりやすいかもしれません。

日本美を堪能させてくれる泉鏡花の作品ですが、表現が古風に感じられるでしょうね。そこがいいのですが、鏡花の場合は小説より戯曲のほうが読みやすいと思います。

どちらも、青空文庫に入っています。

長編

白痴 (上巻) (新潮文庫)
ドストエフスキー (著), 木村 浩 (翻訳)
出版社: 新潮社; 改版 (2004/04)

白痴 (下巻) (新潮文庫)
ドストエフスキー (著), 木村 浩 (翻訳)
出版社: 新潮社; 改版 (2004/04)

白痴というタイトルは逆説的で、無垢、清浄、天上的知性という意味合いが含まれているように思います。

主人公のムイシュキン公爵は、ひとたび知れば、なつかしい人物となります。

この小説では会話が多く、それに圧倒されるためか、それほど長いとは感じられません。読み応えはたっぷりあります。

ジェーン・エア (上) (新潮文庫)
C・ブロンテ (著), 大久保 康雄 (翻訳)
出版社: 新潮社; 改版 (1953/2/27)

ジェーン・エア (下巻) (新潮文庫)
C・ブロンテ (著), 大久保 康雄 (翻訳)
出版社: 新潮社; 改版 (1954/1/12)

ジェーン・エアを好きか嫌いかは別として、ジェーン・エアを知らない自分というものが、わたしは想像できません。英文学の定番――の一編――といえます。

長編ですが、難しい作品ではありませんし、ストーリーには不気味で謎めいたところがあるので、肝試しのノリでどんどん読めると思います。

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