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2013年5月24日 (金)

Notes:不思議な接着剤#86 福音書記者が参考資料を記してくれていたら、歴史は変わったかもしれない

 娘の買ってきたコミックス『バリスタ 9』を読みたいと思いながら(8も、途中までしか読んでいない)、読書の時間がとれないでいる。図書館から一度に10冊も借りてくるのがいけないのかもしれない。

 古代ユダヤ、初期キリスト教の優れた研究家、秦剛平氏の本を読むたび、豊富な資料に裏付けられた斬新な内容に驚かされ、図書館にある秦氏の本はなるべく沢山読んでおきたいと思う。今読んでいる本は『描かれなかった十字架』。

 以下はアマゾンの内容紹介。

内容紹介

キリスト教の根底を問い直す、挑発的講義。ローマ地下墓所の壁画に隠されたメッセージ、聖書外典の語るマリアの真実、反ユダヤ主義とアンチキリストなど、キリスト教の正統教義には語られなかった興味深いテーマを、豊富な図版資料とともにわかりやすく解き明かす。著者は古代ユダヤ思想史と初期キリスト教世界を専門とし、国際的にも高い評価を得る研究者だが、ヨセフスなど当時のユダヤ文献の翻訳紹介、バートン・マックなどの新しい聖書学や死海文書研究の紹介、そしていま「七十人訳ギリシア聖書」の翻訳という大業で知られる。その根底には、キリスト教揺籃期の思想的・文化的・政治的背景を広くかつ丹念に読み解くことによって、キリスト教に深く根付いてしまった「排他の思想」(反ユダヤ主義等)をときほぐそうとする学問的動機がある。本書は、これまでの研究成果を、はじめて一般向けに説き起こしたもので、すでに多くの読者や評者から好評を得た待望の単著である。

 2,000年前の歴史のパレスチナのガリラヤ地方に生きたひとりの人間イエス=歴史のイエスと、その歴史のイエスがキリストに格上げされた信仰のイエスとはまったく別のものと秦氏はいう。

 マタイ、マルコ、ルカ、ヨハネの福音書を世に誕生した順にいえば、

  1. マルコ
  2. マタイ
  3. ルカ
  4. ヨハネ

 となるそうだ。この順序に関しては、大学時代にキリスト教に関心を持った頃から知っていたので、わたしはマルコ福音書を最も素朴な、歴史のイエスに近い姿が描出されているのだろうと長いこと想像していた。

 しかし、実際にはイエスの死からだいぶん経ってから、様々な資料を駆使して書かれているようだ。当時から著作権という感覚があれば――巻末に参考資料一覧でもあれば――事情は違っただろうと秦氏は述べられているが、本当にそう思う。

 最近では五番目の福音書として、「トマスの福音書」を新約聖書に入れたらどうかという議論が欧米の研究者の間であるという。『描かれなかった十字架』は2005年に出ていて、まだそれが実現したというニュースは聴かない。聴けたら面白いのに……。

 キリスト教界が一気に若返るのではないだろうか。いや、下手をすれば崩壊するかもしれないから、「トマスの福音書」が新約聖書の仲間入りする日はなかなか来ないだろうと思う。

「トマスの福音書」とは、全部で114のイエスの語録を集めた語録集で、1945年にエジプトで発見された「ナグ・ハマディ写本」群に含まれていたものだ。

 荒井献『トマスによる福音書』(講談社学術文庫、1994年)から、イエスの言葉を以下に引用。

 “シモン・ペテロが彼らに言った、「マリハムは私たちのもとから去った方がよい。女たちは命に値しないからである。イエスが言った、「見よ。私は彼女〔天国へ〕導くであろう。私が彼女を男性にするために、彼女もまた、あなたがた男たちに似る生ける霊になるために。なぜなら、どの女たちも、彼女らが自分を男性にするならば、天国に入るであろうから」 ”

 マリハムとは、解説によると、マグダラのマリアのことだそうだ。この場面は、以下にノートをとった『マリア福音書』のペテロとマリアが出てくる生々しい場面と響き合う。

 それにしても、凄まじいばかりのペテロの女性蔑視ではないか。

 イエスは別格としても、『マリア福音書』ではペテロとマリアをとりなすレビという男性が描かれているのだから、当時の男性の全部がそうであるわけではなかったのだろう。

 現代にも、国籍を問わず、ペテロのような男はいくらでもいる。そのような男は、一体どこから生まれたと思っているのか不思議だ。木の股からでも生まれたと思っているのだろうか。男の子は小さいとき、母親にとって特に可愛らしく思える存在であることが多いようだ(そういう話をよく聴く)。

 それなのに……全母親をげんなりさせそうなエピソードだ。

 わたしは歴史のイエス、歴史のマグダラのマリアがどうであったかが知りたくて、リサーチを続けている。

 そういえば、昨日の夕方、以下のniftyニュースを閲覧した。

 リンク: 世界のカトリック教徒数と有権枢機卿 - 速報:@niftyニュース.

 そのニュースから、教徒総数、上位五カ国の推移を抜粋してみる。

1900年: 教徒総数2億6657万人
 ローマカトリック教会の歴史が始まったのはヨーロッパであり、1900年の段階でも全世界のカトリック教徒の67%超がヨーロッパ居住者だった。フランスは98%がカトリック教徒で、その数も最も多く4000万人。また、スペインとイタリアの国民も、ほぼ100%がカトリック教徒だった。上位5カ国は、フランス(15%)、イタリア(12%)、スペイン(7%)、ポーランド(7%)、ブラジル(6%)。

1970年: 教徒総数6億6499万人
 1970年には状況が大きく変わる。依然として教徒数が最も多い地域はヨーロッパだが、ラテンアメリカがほとんど肩を並べるようになる。世界のカトリック教徒人口のうち、両地域がそれぞれおよそ38%を占めていた。また、この時期になると、サハラ以南のアフリカ諸国でも着実に普及が進む。上位5カ国は、ブラジル(13%)、イタリア(8%)、フランス(7%)、メキシコ(7%)、アメリカ合衆国(7%)。

2010年: 教徒総数11億6786万人
 ヨーロッパのカトリック教徒数は2010年までに大幅に減少、世界の教徒人口に占める割合も24%を下回るようになった。一方、ラテンアメリカが最大の数を誇る地域となり、割合も41%に増加。アフリカでは、コンゴ民主共和国が最大のカトリック教国で、教徒数はおよそ3600万人、国民の半数以上を占めている。アジアではフィリピンが本家イタリアを上回り、世界の教徒人口の6%、トップ5に入るようになった。上位5カ国は、ブラジル(13%)、メキシコ(9%)、アメリカ合衆国(6%)、フィリピン(6%)、イタリア(5%)。

 カトリック教徒は減少し続けているのかと思ったら、凄く増えている! ヨーロッパで大幅に減少しているのはなぜだろうか。移民が増えて、違う信仰を持つ人が増えたことも一因か?

 しかし、思想的論争は新たなる段階を迎えているのかもしれない。従来のキリスト教とか仏教とかマルクスとかの上に、ニューエイジ運動がブームをつくった神智学系のものがのっかっている気がする。

 というのも、現在の日本の児童文学界には、全共闘が入り込んだ日教組系左翼が目立つが(思想的劣化が激しいようだ)、ファンタジーブームを探るうちに、何とシュタイナーに辿り着いてしまったからだった。

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