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2009年10月22日 (木)

Notes:不思議な接着剤 #25/中世の生活#2 

#25
2009/10/22 (Thu) 中世の生活#2

 一昨日から昨日にかけて再読した本。

阿部謹也『ハーメルンの笛吹き男』(ちくま文庫、1988年)
阿部謹也『西洋中世の男と女 聖性の呪縛の下で』(ちくま学芸文庫、2007年)
原田武『異端カタリ派と転生』(人文書院、1991年)
アーサー・ガーダム『二つの世界を生きて――精神科医の心霊的自叙伝』(大野龍一訳、コスモス・ライブラリー、2001年)

 本日、再読中の本。

ハンス・ヨナス『グノーシスの宗教』(秋山さと子/入江良平訳、人文書院、1986年)

読みたい本。

堀越孝一『パンとぶどう酒と中世』(ちくま学芸文庫)
アマン・マアルーフ『アラブが見た十字軍』(牟田口義郎/新川雅子訳、ちくま学芸文庫)

 中世と十字軍を切り離して考えることはできない。《ハーメルンの笛吹き男》の伝説の原型といわれる、ドイツのハーメルン市における、1284年6月26日の子供たちの失踪事件の解釈には様々あるが、子供の十字軍という説もある。

 南フランスの異端カタリ派に対する大軍の派遣は、アルビジョア十字軍と呼ばれている。

 共に、13世紀の出来事である。

 子供たちの失踪事件の起きた当時のハーメルン市における、庶民の経済的困窮。

 原田武『異端カタリ派と転生』(人文書院、1991年)によると、異端カタリ派が栄えたラングドックは当時、ひじょうに富裕で文化的、医学の面でもアラビア医学の知識を取り入れるなどして先進的な地域だったという。カタリ派はどちらかというとエリートの宗教で、貴族的、都会的であったといわれる。

 十字軍の裏には、経済的理由が潜んでいる。また、支配欲だけでなく、ある種の嫉妬が潜んでいる場合もあるようだ。

 以前にもカタリ派やグノーシスについては触れたことがあったが、カタリ派の思想はひじょうに高度で、難解だ。デフォルメしたような解釈で、幼稚な批判がなされることがあるが、アーサー・ガーダム『二つの世界を生きて――精神科医の心霊的自叙伝』の別註の引用からもわかるように、単純なものではない。

 キリスト教の異端カタリ派は、アルビ派とも呼ばれ、その起源については諸説あってはっきりしないが、キリスト教信仰に古代のゾロアスター教や、マニ教、グノーシスなどの二元論宗教が混交されてなったものと考えられている。ガーダムが指摘するように、それはピタゴラス、プラトン、プロティノスと続く、古代ギリシャ神秘思想の継承者としての一面も持つ。それは仏教とも著しい親近性を示し、「キリスト教の中の仏教」と呼ばれることすらある。全体的に東方的・神秘的な色彩が濃い。

 ブルガリア、ボスニア、ラングドックなど地中海文化域全体を染めた異端の思想の流れはテンプル騎士団に引継がれ、その迫害後、薔薇十字会に新たな現れを見せるとあるが、バルザックがラングドック出身で、薔薇十字の会員だったらしい〔詳しくはこちら〕ことを考えると、興味深さが募る。

 カタリ派は輪廻を信じた。二元論を特徴とする。完全者(司祭)は性行為を断ち、魚を除き菜食中心の食制限を守った。また彼らは人間も動物も殺してはならず、徹底した無抵抗主義者であった。カタリ派信者には女性が多く、完全者の半分近くは女性だったようだ。

 カタリ派はヨハネ福音書を重要視した。集会のたびに福音書が朗読、解説された。一般信者は聖書を読むことが禁じられていたカトリック教会とは異なり、カタリ派では自由に聖書を読むことができた。

 カタリ派だったときの前世の記憶があると認めるガーダムは同じようなカタリ派の生まれ変わりの人々と出会い、『二つの世界を生きて――精神科医の心霊的自叙伝』に書いている。

 カタリ主義では神秘主義と神への直接の接近は、厳しい労働や良識、そして現象への真に科学的な態度と結びつけられていたことを学ばねばならなかった。

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 スミス夫人はしばしば、カタリズムは単純な、愛の宗教であったと述べた。これは、カタリ派の神学がどれほど理解するのが困難なものであるにしても、そのとおりであったにちがいない。どんな宗教の神学も、神学者にとっては別として、難解なものである。われわれはそれを、その力の表われ方と、単純なアピール、カタリ派思想が当時の社会に広まり確立された、その早さと深さの観点からしか説明できない。スミス夫人が善性を、無意識的な、無努力のものとして語るとき、彼女はフォレスト夫人がキリストの精神について、自然な、開放的で心軽やかな原始キリスト教の性質について語ったのと同じものをこだまさせているのである。

 中世には、恐るべき迫害に拮抗するだけの、外観においてはシンクレティズム、本質においては純粋、孤高の神秘主義の純血種ともいえるような思想がまだヨーロッパの巷に堂々と生きていたのだ。

 わたしは創作の世界の中でとはいえ、何という怖ろしさも馨しさもある時代に現代日本の子供たちを送り込もうとしているのだろう! 

 もし、ということは常にありえたことだと思っているが、もし――カタリ派が生き延び、大きな拡がりを見せていたなら、世界は今とはずいぶん違っていただろう。少なくとも東西の思想的、感覚的な分裂感は淡いものになっていたに違いない。

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