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2008年6月29日 (日)

梅雨時の鬱陶しさも吹き飛ぶ鷹女の句~三橋鷹女特集Ⅰ

 鬱々として気分が晴れない中、このところサボりがちだったFC2ブログ「マダムNの俳句紹介」を更新しようとして、「次は三橋鷹女だったな……」と思い、さて、どの句を紹介しようかと句集を開きました。

 前掲のブログや、当ブログへ、《三橋鷹女》で検索してご訪問くださるかたも結構ありますから、こちらも真剣にならざるをえません。

 どの季節も丹念に詠んだ鷹女ですから、この梅雨時の句を含んだ夏の秀句は沢山あります。

 そして、句を拾ううちに、彼女の句の何ともいえない可笑しみ、ペーソス、綺麗さ、不気味さ……今更のようにそのユニークさの虜となり、いつの間にか、鬱々とした気分が晴れていました。あなた様にも、その気分をおすそ分けしましょう。

 当ブログ(左サイドバーをご覧ください)や前掲のブログで既にご紹介済みの句とダブるものもあるかと思いますが、鷹女の夏の句からその一部を以下にご紹介します。

夏痩せて嫌ひなものは嫌ひなり
風吹くと鹿の子の瞳ものをいふ
顔よせて鹿の子ほのかにあたたかし
糞しつつ鹿の子ほろほろかなしけれ
ひるがほに電流かよひゐはせぬか
鼻のない男に見えるひるがほが
しやが咲いてひとづまは憶ふ古き映画
しやが咲いてひとづまは財布乏しくゐる
黒猫もいたく夏痩せ吾が家に
夏痩せて火星に棲めるかほかたち
夏深く我れは火星を恋ふをんな
吾れに白紙蛾に白壁のしろき夜が
蛾が帆かけぶねにみえゐる眼をつむる
蛾の眉を欲りつつしこめ我れは寝ん
夏来たる白き乳房は神のもの
生まれ出て羽蟻の翅が地を這へる
日の穹へ羽蟻あとよりあとより飛ぶ
ひるがほに愚となりてゆく頭脳
ひるがほに昼まぼろしのいや濃かり
昼顔に人は髑髏となりて果つ
梅雨きのこ笠をかさねておびただし
梅雨冷えのまつくろ鴉飛びにけり
綻びし著物の男油照り
白鳥の涼しき夢や噴水塔
純白の薔薇に咲かれて日々無為に
月見草はらりと地球うらがへる
こがね虫天体まろく夢育つ
夕顔や乙女のドレス襞深く
行水終ふる月界までの距離
天の講習終る青葡萄
アマリリス朝日はつねに慈父の如く
炎天に繋がれて金の牛となる
青葡萄天地ぐらぐらぐらぐらす
詩は切れ切れ金の兜の向日葵よ
ひまわりかわれかひまわりかわれか灼く
水急ぐ白一色の菖蒲田へ
くらやみに蛭がたはむれ僧の季節
老牛に道をゆづられ陽炎へり
とかげ妙齢尻尾が風を弄ぶ
校庭や乳歯が抜けてさくらんぼ
星出でてより向日葵は天の皿
飲食や朝の蝉から頭が腐る
牛売つて戻るや虹の戻り橋
菖蒲つぼみ立つちちの島ははの島
あぢさゐの闇夜も知らぬ深眠り

 ちなみに、(前にも書いた気がしますが)三橋鷹女は美しい女性で、若い頃の一葉の写真などは、『夜叉ヶ池』で百合を演じた坂東玉三郎にそっくりです。わたしは息を呑んだほどでした。

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