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2007年3月24日 (土)

「あけぼの―邪馬台国物語―」連載第80回

 夜空には円(まど)かな月が厳かな黄の色調で浮かんでいました。

 その月の黄色は、あのわたしがおとめだった月祭の時の真っ白な月を――、深窓の麗人のようだと思った月の色を偲ばせ、今更ながらに、ヤエミ様のお亡くなりになった事実が胸に迫ったのでした。

「このたびは……」と、わたしはようやくそれだけのことを、おばあさんのように震える声で言いました。

「禊(みそぎ)まで、お付き合いくださいますね? それから、妻の忘れ形見をお守りくださいますね?」トシゴリ氏の言葉は無垢に響きました。

「わたしのような者に、本当によろしいのでしょうか?」と問い返し、「ご存知でしょう。わたしは……」と言ううちに、涙が溢れて物が見えなくなりました。

「いいえ」と、トシゴリ氏は半ば驚いたように優しく答えました。「あなたが女王国を離れておられた間に、色々と事情が変ってしまいました。女王様のお体のことはご存知でしたか?」
「はい」

「立ったり、座ったり、長時間の集中などが、大儀であられるのです。こちらへも、人のいないうちにお連れいたしました。このたびのことが女王様のお体に障りはしまいかと案じております。

 赤んぼをもうけることでは、女王様もわたしも、どちらかというと賛成できませんでした。妻の健康状態では授かるとも思えませんでしたし、それに、もう年でしたし……。
32歳でした。無事に生まれてくれて奇蹟のようでした」

 煌々として徹る月の光を、草むらにすだく虫たちも浴びているでしょうか。〔

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