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2006年12月 9日 (土)

「あけぼの―邪馬台国物語―」連載第73回

 夢といえば、わたしは昨夜、不思議な夢を見ました。それが、ヤエミ様の気配を帯びた夢なのでした。

 ヤエミ様が御輿入れなさってから、あれは何年目のことだったでしょうか? お里帰りなさったヤエミ様に、一度だけお眼にかかる機会がありました。ヨモギが噂したように、ヤエミ様は病に侵されておいでだったのです。

 生(き)の乳を流したようだった額からこめかみの辺りにかけて黄みを帯びて、生命の喜びをそそるあの濃やかな、清光に満ちた瞳も幾分乾いていらっしゃって、結った緑髪も以前ほどゆたかでなくなった様は、見る者の心を不安で締めつけました。

 けれども、また、花の姿をとられていた方が別のもっと深遠なる姿として御出現になったような一種特別の清艶さがあり、深雪(みゆき)を想わせる光彩が細り続けるばかりの総身を包んでいました。

 御姿にはあたかも、病が肉の帳(とばり)を払ってしまって、えも言われぬ天上性を露にしたような、冒しがたい品位が燃え輝いていました。〔

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