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2006年11月 5日 (日)

『返り咲いた薔薇』は最初の難所にかかる、パムク氏は130頁

 なかなか創作や読書の時間がとれない。細切れの用事――雑用が次々と涌き出てきて、頭の中はミンチ状態。つい不満で頬がふくらみそうになるが、専業主婦でもう子供が大きいという、これ以上はないくらい恵まれた条件下で書いているということを忘れるな! 

 おなかがいっぱいになると頭がぼうっとなって書けなくなるので、今日の朝と昼はモロゾフのチョコレート1粒ずつで済ませた。夕飯作りについては、今日わたしは元気いっぱいだけれど、だからこそ深夜にかけて集中して書きたいので、娘にお弁当を頼んだ。家族よ、許してたもれ!

 オルハン・パムクはすごい、なかなかやる。純文学はすたれるばかりかと思っていたが、何のことはない、それは日本だけの話であった。『わたしの名は紅』は只今130頁目だが、推理小説の体裁をとっているその中身はといえば、堂々たる芸術論の展開、これまた展開だ。

 尤も、バルザックほどの広大で深々とした世界観、様々な人物の魅力を描出する力には欠けるが、そもそも文学史中わたしがピカ1と思うバルしゃんと比較するほうが間違っているのだろう。パムク氏に文豪の風格があることは間違いない。

 パムク氏の作品を読んだ人のブログをいくつか閲覧させていただき、優れた感想に教えられたが、中にはストーリィ展開、謎解き部分にだけ目をつけ、それ以外の部分を余分なものであるかのごとく感じている人もあるようだ。文学作品を、ストーリィだけを追うといった偏頗な読みかたをするのはもったいない。という以前に、読みかたを知らないとしかいいようがない。

 このような読みかたはわが国の読者層が感染しがちな現代病の一種だろう。商業主義が生んだ読みかただ。風光明媚な中を、何かいいものが落ちていないかという思い、早く目的地に辿り着きたいという思い、このふたつの価値観しか知らないことから、道のみ見ながら先を急ぐような読みかた……。

 パムク氏の作品に描かれた絢爛豪華な細密画師の世界とは、過去、現在(作中における現在)に活躍する細密画師たちの芸術観――その観念の絢爛豪華さなのだ。ここには芸術家を目指す人、芸術を愛する人全てに訴えかける力を持つ内容の充実がある。芸術観がぶつかり合って殺人事件にまで発展するのだから、わたしにはこたえられない面白さだ。

 わたしはこの本を読むまで、細密画というものがこのようなものだとは知らなかったが、例えば、オリーブというニックネームで呼ばれる細密画師による昔語りの中で出てくる名人はこんなことをいう。

「細密画は真っ直ぐにアラーの神の記憶を求めて、この世を神がご覧になるように描くものなのです」

 これが、オリーブの昔語りに登場する名人の芸術観であり、これを語るオリーブという現役の細密画師の芸術観、宗教観、哲学でもあるわけである。

 細密画師の一族に一番恐れられていることは、目を酷使することによって盲目になることだという。が、一方それは悪いことではなく、全生涯をその美しさに捧げた細密画師にアラーの神が賜る最後の幸せであるという。

「なぜなら、細密画とはアラーの神がどうご覧になるかを絵の中で探し求めることである。そしてその無比なる光景は、厳しい研鑽生活の末に、細密画師が精根尽きて到達する盲目の後に思い出される、盲目の細密画師の記憶によってわかるのだ。年老いた細密画師は、この幻想がわが身におこった時、つまり記憶と盲目の暗闇の中で眼前にアラーの光景が現れた時、傑作を手が自ら紙の上に描くことができるようにと、全生涯を手を慣らすことに費やす」

 こうした細密画の奥義を読むと、世阿弥の『風姿花伝』『花鏡』が連想される。また、わたしがいつか書きたいと思っている鍋島藩秘窯の里のこと……。卑近なところでは谷崎潤一郎の『春琴抄』など。

 パムク氏は谷崎に影響を受けたということだが、なるほどという気がしないでもない。が、その谷崎よりパムク氏のほうに、芸の点ではどうかわからないが、芸術家としての純粋さがあるとわたしには感じられる。谷崎の作品はあざとい、贋物臭い。

 パムク氏と村上春樹氏の作品を比べて評論を書きたいと思っているが、はっきりいって格が違う。比べるなら、まだしも谷崎とだろう。

 まあ、いずれにしても評論は時間をとりそうなので、できたら自作短編を同人雑誌に提出したいところだが……間に合うかなあ。それはともかくとして、気力は充実している。よし、今日も書くぞ! オー!

パムク氏の記事は多くて、右サイドバーのカテゴリーに「オルハン・パムク」の項目があります。クリックなさって、ご参照ください。   

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