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2006年10月21日 (土)

最愛の子にブッダと呼ばれたガブリエラ・ミストラル―その豊潤な詩また神智学との関りについて①

☆プロローグ

 前に書いた記事『ミニチュアのピアノ&文学全集、詩集』の中で、ガブリエラ・ミストラルについて触れ、彼女がラテンアメリカに初めてのノーベル文学賞をもたらしたチリの国民的詩人であり、教育者、外交官としても高名だったことを書いた。

 そして同じ記事で、まだ中学生だったわたしが、ミストラルの詩に陶然とさせられたことも語った。

 その記事から、この記事まで、予想外の時間が経過した。前の記事から次の日くらいにはミストラルに軽く総合的に触れた記事を公開するつもりだったのだが、書こうとして怖気づいてしまったのである。

 バルザックについて書こうとしたときと同じ現象に見舞われたわけだった。別にミストラル研究家ではなく、それ以前に如何なる種類の物書きですらなく、このサイトにご訪問くださっているありがたいかたがたとて、こんなド素人に何の期待をなさるというのだろう。

 軽く、いや、いっそ軽薄に、ミストラル賛を書けばいいではないか――そう思えば思うほど、ミストラルの香気に圧倒される自分がいた。

 圧倒される理由の内訳をいうなら、最も大きな割合を占めるものとして、スペイン語でミストラルが読めない苛立ちということがある。フランス語でバルザックが読めないことで、同様の苛立ちを覚えるように。

 第2には、ミストラルと神智学についてである。名もない1人の神智学徒として、私見にしかすぎないことを、当サイトへの訪問者が少ないからといって、放言することが許されるのかというおののき……。

 第3には、詩人、教育者、外交官として、社会的に多大な功績のあったミストラルの詩人としての一面だけに触れようとするバランスの悪さということがある。

 このほかにも、数えあげればきりがない。でも、書こう。書きたい衝動に身を任せてみよう。

 わたしの前にあるミストラルについて知ることのできる本は以下の3冊だけである。

  • 『世界の詩集 12 世界女流名詩集』(深尾須磨子編、角川書店、昭和48年)
    ミストラルの6編の詩が収められている。
  • 『ガブリエラ・ミストラル――風は大地を渡る――』(芳田悠三、JICC出版局、1989年)
  • 『ガブリエラ・ミストラル詩集 双書・20世紀の詩人 8』(田村さと子訳、小沢書店、1993年)

 ところで、わずかばかりの幸運としてわたしは大学時代、第2外国語でスペイン語を選択していた。少ししか学習しなかったスペイン語の残滓が記憶にこびりついているにすぎないのだが、スペイン語は学習しやすい明快さを持った言語であること、歯切れのよい、シックな言語という印象がある。

 そうした言葉で、ミストラルの詩は書かれたのだ。晩年の詩集『ラガール』の中の『別れ』という詩には、さよなら、ありがとう、という言葉が印象的に登場するが、さようならはアディオス、ありがとうはグラシアスなのだということくらいはわかり、おそらく陰に籠もった、依頼心の強い日本的情緒とは無縁の感じを持つ詩なのだろうと思う。

 プロローグの締めくくりとして、その別れという詩を『ガブリエラ・ミストラル詩集 双書・20世紀の詩人 8』(田村さと子訳、小沢書店、1993年)から紹介しておきたい。なお、このエッセー気ままな更新になるかと思います、あしからず。

・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆

   別れ

      ガブリエラ・ミストラル作/田村さと子訳

いま 突風に
吹き寄せられ 散らされてゆく
おおくのさよなら、
このようなものだ、どんな幸せも。
もし 神が望むなら いつの日か
ふたたび ふり返るだろう、
わたしの求める面差しが
ないならば わたしはもう帰らない。

そう わたしたちは椰子の葉をふるわせているようなもの、
喜びが葉っぱたちを束ねたかと思うと
すぐにみだれ散ってゆく。

パン、塩、そして
孔雀サボテン、
ハッカのにおう寝床、
“語りあった”夜よ ありがとう。
苦しみが刻みこまれた
喉もとに もうことばはなく、
涙にくれる両眼(め)
扉は見えない。


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