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2006年10月28日 (土)

「あけぼの―邪馬台国物語―」連載第69回

 秋風が吹く頃になって、叔母が冴えない様子となりました。

 原因は、叔母の年の離れた妹の変貌が原因だったようです。その妹とはすなわち、亡き母の下の妹であり、わたしのもう1人の叔母にあたります。わたしは小さな頃のままに、ちい――小さな――叔母ちゃんと呼んでいました。

 私塾の仕事の合間に『老子』に没頭しがちだったわたしはうっかりしていたのですけれど、叔母は心痛のために幾分衰弱して見えるほどです。

「叔母さん、お体は、どこも何とも……?」とわたしは尋ねてみました。

 すると叔母は生気のない顔をあげたのですが、その両眼ばかりが変に輝いて見えました。

「マナちゃん。姉さんが、あなたのお母さんがわたしは大好きでした。妹も好きだったけれど、どうやら嫌いになってしまったようだ。ああ、ああ、あの子は吝嗇になってしまった……」と口走ると、叔母は額を押さえました。

 何でもありませんよ、と言うのを無理に寝床へ連れていきました。叔母の心痛の理由はこういうことでした。〔

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