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2006年10月 5日 (木)

「あけぼの―邪馬台国物語―」連載第64回

 数日後、わたしは私塾を休み、まだ薄暗いうちから隣のフミのクニに出かけました。

 隣とはいえ、女の足で歩いての道程です。峠がありますし、浅瀬を選んで渡らなければならない川もあり、結構かかりそうでした。

 それにしても、これからわたしの訪ねようとしている〈婆様〉が、女の身で中国大陸に渡ったなどという話は、とても本当とは思えない話です。それともそれは、そのひとが運営しているという道場とやらを流行らせるためにでっち上げた話なのでしょうか?

 もし本当だとしたら、船の中でしもの始末は? 月経になったりしたら、おお、大変。人間は、というよりわたしは、こうしたことに一番囚われるもののようです。

 そうしたことばかり考えて、はっはっと肩で息をしながら歩きました。そうこうするうちに、眼が霞んでしまいました……。

 あら? ここは何処でしょう? わたしは誰?

 「うんうん、気がついたとね。あんた、血の道と違いますか? やっぱりねえ。隣のクニから歩いてきたぐらいで、卒倒もなかさ。え、何て?  道場。それはここです」

 血色のよい、丸顔の、純朴そうな老嬢が、小さな眼をぱちくりさせています。わたしは運よく、目指す道場の庭先で失神したのでした。〔〕 

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