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2006年9月22日 (金)

「あけぼの―邪馬台国物語―」連載第57回

 ウサギのかたちをした雲が甘く光に浸されて濃淡の影を帯び、大空を溶け流れてゆきます。

 歩いていて、何かパラパラと降ってきたわ、と驚くと、粒々は瞬時に飛翔し、ああ岩燕たちだったのね――と、わかるのでした。青鈍(あおにび)色に流れる川の両岸には春の花々が咲き敷いています。

 そんなある日の午後――。家に誰もいない時を見計らって、わたしはタルから渡された包みを取り出しました。

 包みの中身は木簡で、そこに写されているのは、怖ろしいまでに貴重な『老子』なのです。否、正確に言うならばこれは、タルが写した『老子』五千余言からの抜粋でした。

 タルの写し見た『老子』が、女王の神殿の至聖所における秘宝の一つであることは、まず間違いのないところでしょう。〔〕 

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