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2006年9月18日 (月)

「あけぼの―邪馬台国物語―」連載第55回

 やがて、女王は気落ちしたように「残念なことでした」とそっけなくおっしゃり、そして、わたしを下がらせておしまいになりました。

 こうしてわたしは神殿に来て10年目になろうという年に里へ帰らされる羽目となったのですけれども、女王のこのゆるやかな処罰は、一つには、この時代の住宅事情やら外出事情やらを含んでのことだったのでしょう、とも思います。

 さすがに女王御座(おわ)します宮殿の奥の方まで、ということはありませんでしたが、厳重な警備が敷かれている中、賊もさるもので、闇夜の宮殿の端々では狼藉(ろうぜき)を働くことがありました。

 また、官女が宮殿の外へ出る機会はそんなにはありませんでしたけれども、監禁されているわけではなかったので、野原や川原へ許可をとって出かけることもできました。

 花を摘み、沐浴をし、蝶々を追って楽しんで――と、あなや、という間に衣が散って、『行きはよいよい帰りは怖い』災厄に降りかかられる官女もなくはなかったのです。

 わたしの場合もそのようなわざわいに遭ったのだろうと、女王はお考えになったのかもしれません。否――否。女王ほどのお方が真相を察知なさらなかったはずもあるまいとも思われるのでした。〔

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