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2006年9月11日 (月)

「あけぼの―邪馬台国物語―」連載第53回

 イサエガに抱きすくめられたわたしは、自らのうちに何かを取り込みたいというおののきでいっぱいになっていました。

 そしてふくらんで、ふくらみ極まったその時に放出すべきものを放出したいという純一な衝動そのものとなっていました。

 いつしか飴色の漣(さざなみ)に浸されていたわたしの耳に、イサエガのうめき声が落ちてきました。腐敗して枝を離れた果実のように、落ちてきました。

 夢から醒めたようになってわたしは、わたしのうえでなごんだイサエガを見ました。

 そのときに見た眼を閉じた萎れたような、しかし鮮烈なイサエガの面は、わたしのお乳を飲まずに死んでしまったみどりごの面そのままでした。〔

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