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2006年9月 1日 (金)

あけぼの―邪馬台国物語―連載第46回

 とうとうお眼にかかれないまま、ヤエミ様は御輿入れなさり、秋も深まっていきました。

 秋の大祭である新穀(しんこく)(※収穫儀礼)が迫っていました。官女たちのあいだでは、新しい舞姫の話題でもちきりでしたが、それが誰であるのかを知る者はいませんでした。

「あなた、知ってる? ヤエミ様のことだけれど。御輿入れには、ふかあい秘密があったみたいよ」

 ヨモギとわたしは、回廊を歩いているところでした。

 ヨモギの諜報的物言いは、それに耳を寄せる者まで浅ましくしてしまうものがありました。わたしの眼には、彼女が、赤い輝きのある沼のようにどろっとした暗緑色の光にとっぷり隠れて見えることがありました。

「ヤエミ様はねえ、大病を患っていらっしゃるらしいわよ」

 わたしはぽかんとヨモギを眺めました。

「女王様のお力をもってしても、どうにもならないご病気らしいわ。それで、巫女職をお続けになることができなくなったらしいの。女王様が体(てい)よく、トシゴリ氏に押しつけなさったんじゃなくって? そう推測している者もいることよ」〔

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