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2006年7月 8日 (土)

ハムスター列伝①クッキー~長老の風格があった☆その三

 さて、ハムスターはスモークダックの切れ端を食べたでしょうか、食べなかったでしょうか? 回答――食べませんでした。

 というより食べる食べない以前の問題で、全く目に入らない様子でした。何度ハムスターの目の前に肉の切れ端を置いてやっても、通行を阻む障害物としか認識していない様子でした。

 性懲りもなくハムでも試してみましたが、実験結果は同じでした。実験でおなかが空いたわたしの方が、ハムを2枚ほど、むしゃむしゃ食べました。

 これは今考えれば、当たり前といえば当たり前の話でした。ハムスターが本来雑食性であっても、ペットショップで与えられていた餌は、果物と種子でした。ペットショップでの食生活が習慣化していたのでしょう。

 ともかく、わたしは実験結果に胸を撫で下ろしました。もうこれで、たとえハムスターを放し飼いにしたからといって、自分や家族の身の肉を食料として齧りとられるのではないか、などという心配はしなくてもよくなったわけでした。

 この初代ハムスターのクッキーを飼い始めた頃は、まだハムスターに関する本はあまり出ていませんでした。ハムスターグッズも、ほとんど見かけませんでした。それでわが家でも、周囲でも、ハムスターの飼い主は大方が試行錯誤の中で飼っていたように思います。

 ペットショップのおばさんに訊いたところでは、そこで売られているハムスターはニュージーランドで交尾させて生まれた子供という話でした。クッキーはニュージーランド生まれなのでしたが、ゴールデンハムスターの原産地は、東ヨーロッパやシリアなど中近東の岩の多い沙漠だそうです。

 その後、煮干、茹で卵、チーズ、茹でた鶏肉などを餌箱に入れてみましたが、いずれも手つかずのままでした。ペットショップではリンゴの側にいたという夫の話でしたが、リンゴも好みませんでした。リンゴが嫌いだったのはこのハムスターくらいで、後から飼ったハムスターは一匹残らずリンゴが好きでした。

 クッキーが好きだったのは、ヒマワリの種、パンのかけら、豆腐、ハチミツでした。死ぬ前には老衰のような感じになり、消化機能の衰えが見られましたが、豆腐は最期までよく食べました。

 わたしたち家族は、クッキーと2年間を共にしました。ある日の彼の様子をスケッチしてみましょう。

 小雨のそば降る中、白木蓮の木にはふくよかな花が咲いています。午後3時の家々の窓は瞑目しています。春は♂にとっては悩ましい季節なのでしょう。クッキーはパンパンに張った♂の生殖器を抱いて、眠っています。あえかな、厳しい、不思議な表情をしています。

 夜になると、クッキーは起床し、丹念に洗顔と毛繕いをします。ここでもクッキーの独創性は発揮されていました。後から飼ったハムスターは自分の唾で毛繕いしましたが、クッキーは違いました。

 野菜についた水や給水器から滴る水のしずくを手につけ、それでよく毛を撫でつけていました。ポマードをつけるおじさんにも似た仕草は、忘れようにも忘れられません。〔続〕 

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