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2006年7月 8日 (土)

「あけぼの―邪馬台国物語―」連載第26回

 わたしは枇杷(びわ)を食べていたのですけれども、さすがに食べるのが恥ずかしくなりました。

 ただ、『お気の毒に。それで、お父様は持衰でいらしたのですね』と、お悔やみを述べながらも、わたしの好奇心は留まるところを知らないのです。

『おとめよ、あの嘆かわしい姿を見たことがあるのか』
『いいえ』

『わが国と中国との間の行き来は、少ないとはいえない。渡航は危険を伴う。しかも、失敗はならぬ大事である。失敗してはならぬ事柄にぶつかった時、小心者は神経衰弱になるものだが、倭は小心者の国らしい。

 命がけで願をかけるようなことをするのだから。おまけに横柄者の国でもあるらしい。その任をただひとりの男に負わせるのだから。

 任にあたった持衰は頭を梳らず、シラミを取り除かず、衣服を汚れるままにし、肉を食べず、婦人を近づけず、喪人の如くあらねばならぬ。

 渡航がうまくゆけば、奴婢(ぬひ)や財物が与えられ、失敗すれば……』

『失敗すれば?』と、わたしはごくんと唾を呑み込んで、イサエガの冴え冴えと徹った瞳をのぞきました。

 どこまで行っても果てのないような瞳でした。ひき込まれたら、そのままになってしまいそうな瞳でした。死そのもののような瞳でした。〔

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