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2006年7月 3日 (月)

「あけぼの―邪馬台国物語―」連載第21回

 いざ、とわたしはタルに従おうとしましたが、長旅を終えた病後の体はよろよろします。タルはわたしを助けながら打ち明けました。

「女王様でも、時折、楽しい空想をなさるんです。それはね、あなたが火を跨いで僕とまみえ、僕とあなたのあいだに、玉の子が生まれる……」

 わたしはますます男の子の頭の中を疑うばかりでしたが、ああ、女王の、それはまこと、何と純で、無邪気な空想だったことでしょう……!

 この時から10年の後に女王のお体がご不自由となられてからは、お側近く出入りするようになっていたわたしなども、それまでのようにはお眼にかかることができなくなったのですけれど、タルはそうした女王のお側近くとどまることを許され、飲食を給し、辞(ことば)を伝え居処に出入りしたのでした。

 回廊を行き、女官たちの局(つぼね)と思われる清楚な趣の幾つもの室を過ぎたわたしたちは、そこを曲がってまた回廊を行き、やがて、談笑の声が賑やかに洩れる室の前に立ちました。

「ここが謁見室です」とタルは説明し、躊躇なくそこへわたしを押し入れました。〔

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