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2006年7月 1日 (土)

「あけぼの―邪馬台国物語―」連載第19回

   第二章

 朝の光の中で、わたしは目覚めました。

 そびえる楼閣、めぐる城柵、威儀をただす見張りの兵、しっとりとした宮殿への道……それから……それから。

 ああ、思い出しました。そこでわたしは眠ってしまったのです。信じられないような出来事の中での不思議な気のゆるみから、わたしは眠り込んでしまったのでした。

 ほのと薫るやわらかな寝床でした。頭をめぐらし、わたしはぎょっとしました。

 寝床の傍の敷物にちょこんと男の子が座って、わたしを見ていたからです。男の子は、まあ何て、つやつやした栗色の膚なのでしょう。何て大きな、黒曜石のような瞳なのでしょう……!

「あなたは何処の子?」と、わたしはこわごわ問いました。

 すると、男の子は、睫毛をしばたいて、はにかみました。「大月氏国(※2の子、かもしれません」

「大月氏国……?」
「西方の。中国よりさらに遠い異国です。ナシメさんがそういったの。ナシメさんにも、よくはわからないらしいんです」〔

 
 
クシャナ朝の大月氏国は、今のインド北部からアフガニスタンにまたがる大国。ガンダーラ美術をうんだ。 

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